MHA2015ミーティング参加レポート
MHA (北米メイスンリーヒーター アソシエーション)がノースカロライナのWildacres Retreat (ワイルドエーカーズ リトリート)で年一度開催するミーティング・ワークショップに連続3回目の参加を果たした。 開催期間は2015年4月13~19日の1週間。 今年はアメリカ、カナダ、ドイツ、オーストリア、イギリス、スコットランド、フランス、スペイン、フィンランド、オランダ、オーストラリア、日本のしめて12カ国から125人の参加となり、参加者人数、参加国とも過去最多となった。 アメリカ在住のアルゼンチン人、日本在住のニュージーランド人も含めて考えると、極めて国際色が強い集いとなった。
総勢125人 Photo by Norbert Senf
アメリカ・ノースカロライナ州に位置するこの宿泊施設はある企業のオーナーが個人で所有しているものだが、主に学術、音楽、芸術などのイベント用に提供され、年間約90ほどのグループが利用するという。 営利目的でないので利用料金は大変安い。 最大で110人ほどを宿泊させることができるが今回は参加人数が多かったので、特別にオーナーのコテージも解放してもらって人数を増やしてもらうこととなった。
MHAのこのミーティングの参加費は6泊と滞在中のすべての食事、ワークショップ費が含まれて$425(最近の為替レートで約¥52000)と破格である。
日本からだと、成田からまず国際線が就航するアトランタへ飛び、乗り継ぎでアッシュビル(Asheville) へ、そこで他のフライト組と落ち合う。 ここまでですでに約24時間。 この街で1泊し、そこからレンタカーをシェアして現地入りすることになる。
アッシュビルの街は芸術的な雰囲気があり私のお気に入りの街の一つになった。 現地へ向かう前に半日ほど市内見物。
今年はあいにく前半は雨にたたられたものの気温は高く、工程は順調に進められた。
ワークショップの「ハンズ・オン」と呼ばれる製作メニューはヒーター類が4種類、ドーム型オーブン1台、燻製スモーカー。 その他、ヒーター内部にステンレスのコイルを装着し、それに通水して湯を沸かす装置などのデモも行われた。 みんなものすごい気迫と熱意で、どのハンズ・オンもみるみる形をなしてくる。 写真はマーティ・ピアソンによるドーム型オーブン。
来賓として、イギリスからEcco Stove (エコストーブ)社 モデルE678が出品された。 シリコン・カーバイドという素材でつくられた、いわば工場製メイスンリーヒーター。 モジュール式(部材構成式)で、およそ500kgのユニットは30分ほどで組みあがり、あっという間に点火された。
またドイツからFIretube(ファイヤーチューブ)社製の多機能ヒーターのデモもあった。 かなり複雑な構造であり、いかにもドイツ製らしい。 これはユニット構成式で、コンポーネントの組み合わせでユーザーが希望の機能を注文時にチョイスできる。 今回のこれは給湯もできるので、フロをわかして交代で即席露天風呂を楽しむことができた。
Firetube創業者、Axel Schmits は夫婦+息子という家族参加で、彼らが米国到着と同時に購入したというバスとトラックのあいの子のようなファンキーな車両。 用意していたデカールで飾られており、彼らのものすごいバイタリティを感じた。
今回出品されたストーブは息子一人の運転で、この車でアラスカまで陸路を運ばれていくという。
夜はこんな光景。 メインロッジには暖炉がありそこに火が焚かれる。 思い思いに楽器を演奏したり、お酒を飲んだり。 毎晩ついつい夜更かしをしてしまう。
仕上がったら、さっそ火入れをして乾燥させる。 レンガが屋外に保管されていたためにたいへん湿っており、着火も一苦労。
これは熟練メイスン、ブライアンにより組まれた燃焼実験機、「ファイブ・ラン」メイスンリーヒーター。 煙道が5方向に向きを変えて流れるのでこう呼ばれる。 燃焼実験に向けてキュアとよばれる乾燥をうながすための火がおこされる。
木曜日の夜はファンドレイジング(運営費用調達)のオークション。 オークショナーは定番のマーティ。 今年は例年にない盛り上がりをみせ、最終的な売り上げも過去最高額に至った。
5日目となる金曜日にはどのプロジェクトもほぼ完成し、どの作品にも火が燈る。 写真はオランダ人ピーターの主導によるロケットストーブ。
ファイブ・ランヒーターの煙突に測定装置が付けられ、燃焼実験が行われた。
ところで、アメリカ環境省(EPA)は木を燃やすことが大気汚染になるとして、薪ストーブには厳しい排ガス規制がかけられている。 この規制をクリアしたモデルでないとアメリカ・カナダでは売ることができない。
このメイスンリーヒーターは薪を焚く燃焼装置としては非常にクリーンなものであるのは確かだが、排ガス規制をクリアしなくてはいけないのは例外でなく、それにすでに何年も費やしてきている。 MHAのテクニカル コミッティという技術部が度重なる実験を行い、データを収集してレポートを提出してきているがまだ結論には至っていない。 場合によっては今後、北米でメイスンリーヒーターの販売が不可能になる可能性も否定できないということだ。
工場で大量生産されたストーブと異なり、1台1台が個別に設計されて手作りされるこのメイスンリーヒーターはその存在がややこしい。
正直、彼らはEPAとの終わり無きやりとりに行く先を見失いかけていたところだが、今回、フランスのストーブ設計技師のデミアン(写真中央)が、彼らの培ってきたデーターや測定方法などを携えて参加してくれた。 今後もフランスと協力してよりクリーンに燃える技術を高めていけそうだ。
言葉の障害はカナダ在住のフランス人、ボリスの存在により克服された。
さて、いよいよ金曜午後からは待ちに待った、ピザパーティが催される。 料理自慢のメンバーが自発的にシェフをかって出てくれる。
定番のマルゲリータ。 やはり薪で料理されたものは香ばしさが格段に違う。
クリス・プライアー設計・製作による燻製窯でのスモークサーモンなどもメニューに加わった。 この燻製窯は金属製のスモーカーと異なり、煙が煙道を通るあいだに冷まされて、燻煙が調理する食材を乾燥させづらいのが特長である。
低温でゆっくり燻された食材はしっとりと、やわらかい食感を保つ。 チョコレートや果物なども燻製にすることが可能である。 写真はマグロの燻製(スモークツナ)。
スモーカー(燻製窯)製作者のクリス プライアーが調理も担当。 祭り用の半被を持っていたら、瞬く間に奪われてしまった(笑)
次々に仕上がるピザや燻製にみんな大喜びである。
スペイン人スザナと日本酒で乾杯。 お兄さんとの参加で、今度お兄さんがヒーターを作る予定だとか。
宴は夜が更けても続く。 持ち寄った楽器で生演奏が続き、音楽にあわせて踊る参加者たち。 中央にあるのはロケットストーブで、側面のデザインはジェシカの手描き。
2年前に初参加した際に、出会った Stonehouse Pottery のジェシカ スタインハウザーとは歳も同じで以来友達づきあいをさせてもらっている。 昨年、アメリカから日本へメイスンを招いてヒーター3台を作製した際にも、彼女が参加して手伝ってくれた。
今年、彼女は16歳になる息子を連れてきた。 このフェリックス君(右)は小さな頃からバイオリンを習っており、楽譜なしで耳から聞こえたメロディを弾く訓練を受けてきた。 写真(左)は古株メンバーのスティーブで彼のバイオリンはコンサートクオリティ。 そこにフェリックスがデュエットして、みんなその音に聞き惚れた。
6日目土曜日。 ほとんどの参加者にとっての最終日だが、皮肉にも朝から気持ちよく晴れ渡った。
閉会式が終わると、みんなで一斉につくったものを解体しはじめる。 レンガはまだじかに触れないほど熱いのがなぜかはかない。
全員が自発的に黙々作業をおこない、2時間足らずで全てのクリーンナップが終わる。 昨夜の大騒ぎが夢物語だったようだ。
日本から持っていった100円の提灯に、みんなからサインを寄せ書きしてもらった。 本来みやげとして持って帰ってこようと思っていたのだが、MHAで保管してもらい、毎年増やしていくことに決定。
片付けが済み、夕方にカーシェア組とアッシュビルの街へ発つ。 また来年!